日本のフリーランスの人口はここ数年で20%以上増加しており、フリーランスとして働くことは珍しい時代ではなくなりました。フリーランスとして働く外国人も増加しており、通訳・翻訳、Webデザイナー、システムエンジニア、漫画家、作曲家、ライターなどで就労ビザを取得しています。
フリーランスと企業とのマッチングサイトも増えていることなどから、より仕事が見つけやすくなり、これからも増加していくことが予想されています。
フリーランスのメリットとしては、時間や場所に縛られずに自由に仕事ができることが挙げられるでしょう。また、持っているスキルを存分に活かすことができるため仕事量がそのまま報酬につながることが魅力です。
一方で、デメリットとしては、会社に属している場合とは異なり、自分自身で仕事を見つけ、契約しなければいけません。したがって、不安定な面があります。
そこで、フリーランスとして就労ビザを取得できるかどうかは、このデメリットの部分が厳しく審査されます。
では、実際にどのような点に気を付けて申請すれば、就労ビザを取得して働くことができるでしょうか。
1 申請する在留資格に気を付ける
ある外国人の方から、「これから独立して働きたいから、会社を作ろうと思います。ですから、経営管理ビザについて相談したいです。」というご相談がありました。
個人で働く→経営者になる→会社を立ち上げて経営管理ビザを取得しなければいけない
おそらくこのような思考になったようです。
ただ、詳しく話を聞くとフリーランスとして企業と業務委託契約を締結して働くということでした。
経営管理ビザは資本金として500万円以上を用意しなければならないほか、審査期間も長くかかり、審査自体も厳しい傾向があります。ですが、フリーランスとして働く場合は、その業務内容に応じた就労ビザを取得すればよい場合がほとんどです。
ただし、フリーランスといっても、その業務内容は様々なので、就労ビザを取得するといっても、「技術・人文知識・国際業務」「芸術」「興行」など多くの種類から選択して申請しなければなりません。この選択を間違えて申請してしまうと、不許可になってしまいます。
したがって、ご自身の仕事内容にあった適切な在留資格で申請することが、とても重要になります。
2 フリーランスの申請はここが難しい!
フリーランスで働くために就労ビザを申請する場合と、会社員で働くために就労ビザを申請する場合とでは何が違うでしょうか。
フリーランスとして働く場合は、事業主となる点で自由度があり、働いた分だけ報酬が増える傾向があるというメリットがあります。
一方で、フリーランスとして働く方の多くは、契約先企業等と業務委託契約を締結することが多く、業務委託契約は、継続的な契約であっても通常1~2年程度の契約を更新する形をとることが多いです。
また、会社員のような基本給がなく、休んでしまったら報酬が少なくなるだけでなく、契約を解除されるおそれも高くなっています。したがって、会社員と比べ不安定さがあります。
そのため、フリーランスの就労ビザ申請では、収入が安定していることをアピールする必要があるのです。
1回の仕事が高い報酬であったとしても、継続性がなければ収入の安定性がないので不許可になる可能性が高くなります。
したがって、フリーランスとして業務委託契約を締結した場合は、報酬、契約期間が特に厳しく審査されます。フリーランスの場合は、口約束だけで仕事を依頼される場合もよくありますが、就労ビザを取得することを考えた場合は、客観的証明として、報酬額や契約期間が書かれた契約書を作ってもらうことをお勧めします。
3 フリーランスの許可基準
では、報酬、契約期間はどのくらいが望ましいでしょうか。
報酬
安定した生活を送れるかという基準として永住審査でも基準額となる300万円が目安でしょう。
したがって、報酬は年間300万円程度あることが基準となります。
複数と業務委託契約を結び、報酬をもらっている場合は合算で計算しても構いません。
むしろ2つ以上軸となる契約があると、安定性をよりアピールしやすくなります。
年収が300万円以下の場合(例えば、年収250万円)であっても、直ちに不許可となるわけではありませんが、その場合は、より説得的に説明することが必要になります。
契約期間
契約期間は1年以上の契約が望ましいです。
数か月の契約のような場合は、安定してフリーランスとして働くことができないと判断されやすいので、不許可になる可能性が高くなります。
もっとも、数カ月の契約期間であっても、継続的に更新される場合や定期的に契約が締結できているという場合には許可される可能性はあります。
そのような場合は、これまでの更新実績や契約機関との更新に関する条件を明確化した書類等が必要になります。
その他
契約機関について
契約機関に関しても審査される理由は、安定した契約機関でないと、ちょっとした社会情勢の変化等で契約が打ち切りということになりかねないからです。
したがって、 安定した契約機関の場合は決算書をもらうのがベストですが、もらえない場合は、会社の規模等から契約機関の安定性をアピールします。
申請には契約機関のサインなど、協力が必要になる場合が多いので、フリーランスとして日本で働くことを目指している場合には前もって、ビザの際には協力が必要ということを伝えておく方が良いでしょう。
実績について
会社員時代から副業でやっていた業務を、フリーランスになった後でも継続するという場合やフリーランスとして既に働いている場合には、成果物や受賞歴を提出し、フリーランスとして稼げることをアピールします。
まだフリーランスとして働いていない場合は、フリーランスとして稼ぐ“売り”(アピールできるもの)を提出できるとよいでしょう。
最終学歴・実務経験について
「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得するには、原則として日本国内外の大学・大学院あるいは日本国内の専門学校を卒業して学位を取得していることが必要になります。このような学歴がない場合は、業務内容に応じて3年以上または10年以上の実務経験が必要です。
4 まとめ
以上の基準をまとめると、次のようになります。フリーランスとして独立するか悩んでいる場合には、次の項目をクリアできるかを参考にして下さい。
- フリーランスとして生計が立てられるか(年収300万円程度)
- 契約している企業は複数か(1社との契約の場合は、継続性の説明・証拠が必要)
- 契約は長期または更新が自動的になされる契約か
- フリーランスとして仕事を続けていくスキルが十分か
- 就労ビザの年収判定には、日本の企業からの報酬のみが判断材料
このように、フリーランスとしてビザを取得するには、どのような仕事をするかによって、提出する書類も異なってきます。また、一般的な就労ビザとは異なり、最初に契約書を交わしていなかったなどによって、ビザが取得できなくなる可能性もあります。
したがって、フリーランスの就労ビザ取得には申請する時機がとても重要です。
フリーランスとして日本で働くことを考えた時点で、フリーランスのビザ取得に詳しい行政書士に相談することをお勧めします。もっとも、フリーランスのビザ申請は難しく、長くやっていても経験したことがない行政書士は多いです。
当事務所では、これまでに多くのフリーランスのビザ申請を行った経験があるので、現在の状況から申請のタイミングを見極め、今後どのような契約を結べば許可の可能性が高まるのか、今のままの契約社数だと許可の見込みがないのかなども、適切にアドバイスさせていただきます。