配偶者ビザ(結婚ビザ)を取得して日本に入国する外国人は、毎年1万人を超えています。ところが、手続きが多い国際結婚をようやく済ませることができたのに、配偶者ビザの取得ができず、なかなか一緒に暮らせないということは珍しくありません。
配偶者ビザの不許可率の具体的な数字は公表はされていませんが、実際に不許可になってしまったというご相談は多く、不許可確率は決して低くはないとされています。
特に一度不許可になってからの再申請の場合は、前回の申請内容との整合性も重視されるため、不許可確率は格段に上がってしまいます。
では日本人の配偶者、永住者の配偶者のビザ取得について詳しく見てみましょう。
1 配偶者ビザ取得に必要なこと
配偶者ビザ取得のためには、申請前に結婚をしておくことが必要です。婚姻の届け出は日本で先にするか、外国で先にするかは基本的に自由です。どちらの国で先に結婚手続きを行うかは、お二人の状況や外国の婚姻方法の手続きの多さなどによって決めると良いでしょう。
ただ、外国人との婚姻手続きには時間がかかる場合が多く、結婚手続きを済ませた後で、配偶者ビザ手続きに移ると一緒に日本で生活するまでにかなりの時間がかかってしまいます。
そのため、婚姻手続きの途中から、ビザ手続きも同時並行で進めることが望ましいといえます。時間的にも同時並行が難しいという場合には、ビザ手続きだけ専門家を利用する方も多いです。
2 配偶者ビザ申請の注意点
配偶者ビザの審査は一般的に厳しいとされていますが、これは配偶者ビザが、就労制限がなく、どんな仕事にも就けるというメリットがあるためです。
そのため、日本で働きたいという外国人にとって、とても魅力的なビザなので、偽装申請が多くあります。
(偽装結婚ブローカーや虚偽申請をした人が逮捕されているのをニュースで見たことがある方も多いと思います。)
したがって、出入国在留管理庁は偽装結婚ではないかという疑いの目で厳格に審査をします。
ただし、不許可となりやすい状況であっても、疑念を晴らすポイントを抑えた申請をすれば、不許可確率を抑えることができます。
一般的に、次の事由がある場合は、不許可の確率が高くなるため、慎重な申請が必要になります。
- 年齢差が大きい
- 交際期間が短い
- 会った回数が少ない
- 連絡頻度が少ない
- 二人の写真が少ない
- 結婚相手の家族のことをよく知らない、会ったことがない
- 離婚歴がある
- 出会い系サイトで知り合った
- 水商売等の風俗関係のお店で知り合った
- 生計面に不安がある(無職、収入が少ない、雇用が不安定)
- 共通言語に不安がある
- 難民申請中である
- 在留状況に問題がある(多いのが、留学生の成績・出席不良など)
3 配偶者ビザの審査基準
では、配偶者ビザではどのような事が主に審査されるでしょうか。
配偶者ビザの審査は主に以下のことが審査ポイントとなっています。
- 婚姻の信憑性の有無
- 生活基盤の安定性の有無
- 在留状況(既に外国人配偶者が日本に在留している場合)
①婚姻の信憑性
先ほど述べたように、入国管理局は偽装を疑ってくるので、その偽装結婚の疑いを晴らすために婚姻の信憑性が高いことを示す必要があります。
理由書で、合理的に説明するとともに、その説明を担保する証拠を出していくことも必要です。
特に、上で挙げた不許可となりやすい理由がある場合は、統計的に偽装結婚が多いため、より説得的な説明が必要になります。
婚姻の信憑性で特に注意を払わなければいけないのが、誤解を招く不必要な事実や曖昧な事実の記載、不必要な書類の提出です。理由書では、求められる必要なことを述べていけば大丈夫です。
出入国在留管理庁のホームページで必要書類の一覧が出ていますが、あれらの書類は申請を受け付けるための最低限の書類であって、必ずしも審査が通る書類ではないので、お二人の状況に応じて資料を用意しましょう。
②生活基盤の安定性
ここで審査されるのは、主に年収と雇用形態です。生活が安定していないと、結婚生活も不安定になることが多いので審査されます。
一方で収入が多いからといって、申請が簡単になるとは言い切れません。日本人の収入目当ての偽装結婚も多くあるため、「婚姻の信憑性」に不安があると書類の作成次第ではマイナスの影響になる可能性があります。したがって、「婚姻の信憑性」と「生活基盤の安定性」は相互に関連しているので、合理的な説明が求められます。
安定な生活を送ることができる収入かどうかは、住む家が借家なのか持ち家なのか、郊外で住むのか、子供や扶養がいるのか等で変わってきます。預貯金があればプラスにはなりますが、預貯金は使うと一瞬でなくなる性質のものなので、安定的な収入があるかがより重視されます。
収入面としては、扶養者の数にも拠りますが、基本的に年収で250万円程度、安定がある正社員であれば問題ありません。
ただ、日本人側の年収がこれより低く、アルバイトや非正規雇用であっても、マイナス部分を埋めるしっかりとした書類等を揃えることで許可をもらうことは可能です。マイナスをどのようにして埋められるかは、個々人の状況によって変わってきます。
③在留状況(変更申請の場合)
配偶者ビザを取得する外国人配偶者が、留学や就労ビザ等で日本に既に在留している場合には、日本での在留状況も審査対象になります。
例えば、留学ビザで在留しているのに、学校に通っていない、学校の成績が悪い、資格外活動許可以上のアルバイトをしているという場合には、在留状況が不良として不許可の確率が高くなります。
また、日本での在留中に犯罪をしてしまったという場合にも、不許可の確率が高くなります。
比較的軽微な交通違反(スピード違反や駐車違反等)は、帰化申請の際には問題視されますが、配偶者ビザの申請の際には、特段気にする必要はありません。
4 申請の注意点
出入国在留管理庁では、過去の申請内容や、滞在歴等についても入念に調べて許可を出します。過去の入国の際にポロっと発言した言葉まで記録されており、配偶者ビザ申請の際にしばしば整合性を確かめられます。
そのため、過去との整合性や説明等に問題があると不許可の確認が高くなります。
また、1度申請が不許可になると信用性を失うほか、最初の申請との整合性も厳しくチェックされるので、再申請では不許可という事実は大変マイナスの影響をもたらす場合があります。
したがって、1回目の申請から慎重に申請をすることが必要になります。
なお、短期滞在で来日後に、配偶者ビザへの変更も可能ですが、短期滞在ビザは帰国が前提のビザであることから、短期滞在から配偶者ビザへ変更する場合は別途交渉が必要になります。
当事務所では、中国、韓国、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ロシア、アメリカ、イギリス、ノルウェー、メキシコ等の多くの国の方々に対応し、現在のところ配偶者ビザの許可率は100%を維持しています。
短期滞在ビザから配偶者ビザへ変更したいという方も対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。