海外で生活してきた日本人と外国人のご夫婦が、定年を機に日本で生活するケースや、定年後に外国人パートナーと結婚して日本で生活するケースなど、定年後に無職となってから配偶者のビザを取得するにはどのような点に注意すべきでしょうか。
ここでは、定年後に無職となった状態で配偶者ビザを取得する方法について解説します。
配偶者ビザの審査基準
まず、確認しておきたいのが、配偶者ビザを取得するための要件です。審査では、主に以下の婚姻の信憑性と生計の安定性が求められます。
- 婚姻の信憑性の有無
- 生活基盤(生計)の安定性の有無
婚姻の信憑性
婚姻の信憑性については、偽装結婚ではないのかという疑いの観点から審査され、厳格に審査されます。
したがって、婚姻の信憑性に問題がないと本人たちが思っていても、問題がないことを客観的に立証できなければ、不許可となってしまいます。
特に、夫婦共に無職である場合には、外国人配偶者の働く必要性が高くなるため、日本での就労が本来の目的で日本人と結婚したのではないのか、という偽装結婚がより疑われる傾向が高くなります。
そのため、婚姻の信憑性に関しては、しっかりと理由書で説明するとともに、写真やLINEなどの通信記録で問題がない結婚であることを立証していくことが重要です。
長く海外で生活されていたご夫婦であっても、信憑性はチェックされます。中には、実際は別居期間が長く離婚状態であるにもかかわらず、日本で生活することを目的とした申請もあるからです。
生計の安定性
生計の安定性とは、日本での経済的な基盤があるかということです。経済的な基盤が不安定だと、婚姻生活を安定して継続的に送ることが難しくなり、不許可の確率が高くなります。
定年して無職となった場合にはこの点が問題になります。
無職の場合の申請方法
入管が見たいのは、「経済的な基盤」があるか
無職であっても、経済的な基盤がしっかりとしていれば、婚姻生活を安定的に継続して送ることが可能です。
経済的な基盤があるかは、生活保護の受給額が目安とされています。
地域によって生活保護受給基準は異なってきますが、おおよそ夫婦であれば年間で160万円程度が目安になります。扶養する必要がある子供がいる場合には、子供一人につき、この額に78万円(国民年金の老齢基礎年金が基礎とされています。)が加算された額が目安になります(例:家族三人の場合には、年間約240万円)
つまり、この額を年金などで継続的に得られるのであれば、夫婦共に無職であっても、許可の確率は上がります。
また、定年して無職の方の場合は、年金のみでは生活は厳しくなっているので、老後資金を蓄えている必要もあります。
当事務所では、無職で年金で生活されている方であっても、配偶者ビザを取得しているので、お気軽にご相談ください。
参考)外国人配偶者の海外での収入は基礎にはならない
現在、海外で外国人配偶者が働いていても、来日する時に退職し、無職になる場合には、海外での収入は審査対象にはなりません。
もっとも、来日時に無職であっても、申請時点で既に日本での就職が内定している場合には、収入の基礎に算入されます。ただし、その場合には、働き出してもすぐに給料が入るわけではないので、次の収入が得られるまでの間の預貯金は必要になります。その場合の預貯金は、新生活のための費用(海外からの移住代など)に15万円程度を加えた預貯金が目安となるでしょう。
逆に言えば、「配偶者ビザを取得した後に、働いて月収20万円程度稼ぐ予定です。」と言っても、それは確定事項ではないので、審査対象にはなりません。