技能実習生は日本全国で約40万人おり、在留資格別では最も多い永住者の次に多くの割合を占めています。
そのため、技能実習生と日本人の結婚は珍しくなく、当事務所でも多くのご相談をいただいております。
日本滞在中に、技能実習生との結婚手続きを進めることは可能です。一般的な方法としては、婚姻要件具備証明書を在日本大使館・総領事館や母国にいる親戚を通して取得し、日本の役所に婚姻届等と共に提出します。
なお、技能実習生の結婚の場合は、受け入れ先からの承諾も必要になる場合があります。
ただし、結婚手続きがスムーズにできたとしても、結婚手続きと配偶者ビザ手続きは別物なので、配偶者ビザの取得はできなかったということはよくあります。
特に、技能実習生の場合は、技能実習から配偶者ビザへの変更は原則認められていない点に注意が必要です。
技能実習ビザ→配偶者ビザへの変更が原則不可である理由
技能実習制度は、日本で培われた技能・技術・知識を、実習を通じて開発途上地域等へ移転することで、経済発展に貢献する国際協力していく制度です。
したがって、技能実習生は学んだ技能・技術・知識を母国に持ち帰り、それを活かしてこそ、この技能実習制度の目的が達成されます。
そのため、日本で結婚相手を見つけ、日本で生活していくとなると、せっかく学んだ日本の技術等を母国に伝えることができないので、技能実習から配偶者ビザへの変更は原則認められていないのです(すでに日本人との間に子供が生まれているなどの場合には、子の保護の観点から、変更が例外的に認められる場合があります)。
では、技能実習生は配偶者ビザを取得できないのでしょうか。
答えは、原則として一旦帰国すれば、取得することが可能です。ただし、その難易度は高く、またどのように技能実習をしてきたかよっても変わってきます。
技能実習→配偶者ビザの取得申請
先ほど述べたように、技能実習は日本の技術を学び、本来帰国することが前提とする制度ですから、技能実習から配偶者ビザへの変更は原則認められません。
したがって、配偶者ビザを取得したい場合は、一旦帰国してから日本人が呼び寄せる「在留資格認定証明書交付申請 」をします。
在留資格「日本人の配偶者等」の申請には、出入国在留管理庁では、以下の書類を提出するよう求められています。
- 在留資格認定証明書交付申請書 1通
- 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
- 配偶者(日本人)の方の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
- 申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書 1通
- 日本での滞在費用を証明する資料
(1) 申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通
(2) その他
入国後間もない場合や転居等により、(1)の資料で滞在費用を証明できない場合は、以下の資料
a 預貯金通帳の写し 適宜
b 雇用予定証明書又は採用内定通知書(日本の会社発行のもの) 適宜
c 上記に準ずるもの 適宜 - 配偶者(日本人)の方の身元保証書 1通
- 配偶者(日本人)の方の住民票(世帯全員の記載のあるもの) 1通
- 質問書 1通
- スナップ写真(夫婦で写っており,容姿がはっきり確認できるもの・アプリ加工したものは不可。)2~3葉
- 返信用封筒
ただし、これらの書類はあくまで申請の受け付けに必要な書類であって、許可が出る書類一覧ではないことに注意が必要です。
というのも、ビザの申請はお二人の状況やこれまでの在留状況など、個別の事情によって説明を要する点が異なるため、入管の方でも一般化した許可が出せる提出書類一覧というものを作成できないからです。
したがって、上記書類に加えて、個別の事情に応じた提出必要書類があるということに注意しましょう。
技能実習→配偶者ビザの取得難易度
一旦帰国するということは、技能実習生でなくなってから申請するということになります。そして、この技能実習生でなくなってからというところが、配偶者ビザ取得の難易度に大きく関わってきます。
配偶者ビザ申請までには、以下の状況が考えられますが、下に行くほど取得の難易度が上がります。
- 技能実習を満了→帰国→3年以上経過後、配偶者ビザ申請
- 技能実習を満了→帰国→帰国後すぐに配偶者ビザ申請
- 技能実習中断→帰国→配偶者ビザ申請
- 技能実習失踪→帰国→配偶者ビザ申請
上記①②については、提出する書類や説明が異なるだけで、難易度としてはあまり変わりません。しかし、③になると、難易度は上がり、④は状況次第で、かなり不許可の確率が高くなります。
したがって、技能実習生の間に結婚をしたとしても、配偶者ビザの取得には、技能実習を満了してから申請することをお勧めします。