短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更は、やむを得ない特別な事情がなければできないということになっています(入管法20条3項ただし書)。
実務では、特別な事情を事前に説明し、変更申請をしています。
それでは、短期滞在ビザ → 配偶者ビザへの変更について見てみましょう。
短期滞在からの変更に必要な「やむを得ない特定な事情」とは
短期滞在から配偶者ビザへの変更が原則認められていない理由は、短期滞在ビザが帰国を前提としているビザだからです。ビザ免除国でない場合は、短期滞在ビザ申請をしますが、その申請書には帰国の便名まで記載が必要になるほど、帰国まできっちりと管理されています。
つまり、帰国予定で来日したにもかかわらず、そのまま日本に居続けるというのは、「話が違う」ということになるのです。
また、短期滞在は他の在留資格に比べ、比較的容易に発給されるので、当初から長期で滞在しようとしている外国人に厳格な事前審査をしている他の制度との整合性からも、適当でないからです。
もっとも、日本在留が人道上の観点等から相当で、日本在留を認めるべき必要性があるという場合には、短期滞在から配偶者ビザへの変更が可能になります。
具体的には、以下のような場合です。
- 婚姻の信憑性に問題がなく、短期滞在中に婚姻手続きを完了した場合
- 夫婦の間に幼い子供がいる場合
- 滞在中に、日本で出産の予定がある場合
以上のような、相当性・必要性がある場合には、書類を不備なく用意し入管で交渉する必要があるため、専門の行政書士に依頼することをお勧めします。
短期滞在ビザ → 配偶者ビザへの変更のメリット・デメリット
メリット
短期滞在ビザから配偶者ビザへ変更する方法を採ると、来日から配偶者ビザが許可される間の数か月間早く日本で夫婦生活を送ることができます。また、通常、変更申請の場合は、海外から配偶者を呼び寄せる認定申請の場合よりも審査期間は短い傾向があります。
したがって、配偶者ビザ取得をした後で日本で働くことを考えている外国人配偶者にとっては、結果として早く働くことも可能になるというメリットもあります。
- 早くから日本で一緒に生活が可能になる
- 早く就職ができるようになる可能性がある
デメリット
一方で、最終的に不許可となってしまった場合は、一旦帰国してからの申請に切り替えることになるでしょう。
その場合は、また一から審査がなされるため、申請から2~3カ月かかり、結果として、最初から認定申請で申請していた方が早く配偶者ビザを取得できたということになります。
また、大きなデメリットではないものの、変更申請の場合は、申請に4000円の手数料が必要になります。
- 不許可の場合は、帰国してからの申請となり、結果としてビザ発給が遅れる
- 変更申請には、手数料がかかる
短期滞在から、配偶者ビザの取得については、上記のデメリットを回避するため、短期滞在中に「在留資格認定証明書交付申請」をする方法があります。
この方法は、短期滞在中に在留資格認定証明書が交付されたら、帰国することなく配偶者ビザへ切り替えることが可能です。
ただし、この方法では、申請が遅くなると、在留資格認定証明書が短期滞在の期限までに交付されないという事態が生じる可能性があるので、いかにスムーズに進めていくかが重要になります。
短期滞在ビザ→配偶者ビザへの変更方法
外国人配偶者が、在留資格「短期滞在」から「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」へ変更する申請は、『在留資格変更許可申請』という申請になります。
「日本人の配偶者等」への変更申請の場合には、出入国在留管理庁では、以下の書類を提出するよう求められています。
- 在留資格変更許可申請書 1通
- 写真(縦4cm×横3cm) 1葉
- 配偶者(日本人)の方の戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
- 申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書 1通
- 日本での滞在費用を証明する資料
(1) 申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通
(2) その他
入国後間もない場合や転居等により、(1)の資料で滞在費用を証明できない場合は、以下の資料
a 預貯金通帳の写し 適宜
b 雇用予定証明書又は採用内定通知書(日本の会社発行のもの) 適宜
c 上記に準ずるもの 適宜 - 配偶者(日本人)の方の身元保証書 1通
- 配偶者(日本人)の方の住民票(世帯全員の記載のあるもの) 1通
- 質問書 1通
- スナップ写真(夫婦で写っており,容姿がはっきり確認できるもの・アプリ加工したものは不可。)2~3葉
- パスポート 提示
- 在留カード又は在留カードとみなされる外国人登録証明書 提示
ただし、これらの書類はあくまで申請の受け付けに必要な書類であって、許可が出る書類一覧ではないことに注意が必要です。
というのも、ビザの申請はお二人の状況やこれまでの在留状況など、個別の事情によって説明を要する点が異なるため、入管の方でも一般化した許可が出せる提出書類一覧というものを作成できないからです。
したがって、上記書類に加えて、個別の事情に応じた提出必要書類があるということに注意しましょう。
短期滞在ビザ→配偶者ビザへの変更の注意点
短期滞在ビザから配偶者ビザへの変更は、あくまで例外的な方法なので、配偶者ビザの審査項目である婚姻の信憑性や生計面で、より問題がないことが必要になります。
また、「90日」の短期滞在ビザからの変更でなければ、申請までの期間や、審査期間との関係上、「15日」や「30日」の短期滞在ビザでは難しくなります(不可能ではないものの、非常にタイトになり、間に合わないおそれもあります)。
したがって、短期滞在からの変更の際には、90日の短期滞在ビザで来日し、専門家の下、審査基準を十分に満たしている申請書類を用意することをお勧めします。