「同性同士のカップルで、配偶者ビザを取得できますか?」というご相談を頂くことがあります。
LGBTの人々の人権を擁護する各国の法的義務が求められ、日本でも同性のパートナーシップ制度が2015年から一部の自治体に導入されましたが、日本の民法では未だ同性婚は認められていません。
では、外国人同士や日本人と外国人の同性婚で、配偶者ビザを取得できるでしょうか。
外国人同士の同性婚の場合は、「特定活動」ビザ
外国の一方が永住者である場合は、「永住者の配偶者等」という在留資格の取得ができるかが問題になります。
この点、外国で有効に成立した婚姻であっても、入管は「永住者の配偶者等」における「配偶者」には同性婚配偶者は含まれないとしています。
したがって、同性婚の場合は、「永住者の配偶者等」の取得はできません。また、同様に、在留資格「家族滞在」や「定住者」の取得もできません。
しかし、入管は通達で、人道上の観点から、外国人同士の同性婚については、当該外国人当事者の各本国において有効に成立している場合は、本体者(先に日本で就労や留学をしている人)に在留資格があれば、その同性配偶者に告示外特定活動としての「特定活動」への在留資格変更を許可するとしています。
- 「永住者の配偶者等」「家族滞在」「定住者」の取得は不可
- 「特定活動」への在留資格変更は許可される可能性あり
「特定活動」ビザの要件
外国人同士の同性婚で「特定活動」ビザを取得するには次の要件が必要になります。
- 外国人当事者の各本国において婚姻が有効に成立していること
- 日本で生活していく経済的な基盤があること
- いずれかの外国人がビジネス分野などの在留資格を持つこと
まず、同性婚が認められている国の出身で、有効に同性婚が成立していることが求められます。入管への申請の際には、同性婚の成立を示す婚姻証明書等が必要になるので、予め用意しておきましょう。
次に配偶者ビザ同様に、この「特定活動」ビザは婚姻の継続を前提に許可されるビザなので、日本に経済的な基盤があることが必要になります。
経済的な基盤の判断については、多額の預貯金がある場合を除いては、預貯金よりも、安定的な収入が主な審査対象になります。既に、一方の外国人配偶者が就労ビザを取得して日本で安定的に年収250万円程度稼いでいれば、特に問題になることはないでしょう。
日本人と外国人同士の場合は、難しいのが現状
日本の民法では現在のところ同性婚を認めていないため、外国人の本国で有効であっても、日本では、日本人と外国人の同性婚は法的に有効な婚姻ではありません。
したがって、「日本人の配偶者等」の在留資格は取得できません。
では、外国人同士の場合同様、「特定活動」の在留資格は取得できるでしょうか。
この点、入管は両当事者の婚姻が有効に成立していることを条件に「特定活動」への変更を認めるとしています。したがって、日本人と外国人同士のパートナーの場合には同性婚が認められていないため、現在のところ「特定活動」の在留資格は残念ながら許可されないと解されています。
したがって、パートナーが日本に在留するには、就労ビザや留学ビザ、経営管理ビザなど別の在留資格を取得する必要があります。
今後はどうなる?
この通達は平成25年のものであり、それからさらに同性婚の議論は活発にされるようになりました。また、世界でも次々に同性婚を認める国が増加しています。
そして、2021年5月の報道によると、
政府が同性婚が認められている外国で日本人と結婚した外国人同性パートナーに、日本での在留資格を認める方向で検討に入った。日本人が帰国した場合、パートナーに「特定活動」の在留資格を付与することを検討している。同性婚を認める国が増え、運用改善を求める声が出ていた。
2021年5月17日読売新聞オンラインの記事
とあります。また、先進7カ国(G7)の中で同様な法制度が整備されていないのは日本だけであり、現在国会でも議論が活発化してきていることからも、今後認められる可能性はあります。
もっとも、日本が同性婚を認めた場合であっても、相手側の国で認めていない場合にどのような運用になるのかは不透明なところがあります。
いずれにしても、パートナーとの交際の実績は求められるため、認められるその日まで客観的に交際の事実がわかる実績を提出できるようにしておくことが必要になります。